はじめに東日本大震災時での派遣の流れ、そして当時の様子についてお話しします。
当時は、口腔ケアが災害関連死の予防に関わっているとは分かっていても、まだ どの様な対応が必要なのかは検討を始めたばかりの状態で体制も整備されていませんでした。そんな中で、被災地・気仙沼市への派遣が決まり、手探りでの被災者の方々への口腔ケアを始めました。受け入れ側である気仙沼市側でも1ヶ月経過した時点でまだ混乱しており、必要な情報が避難所と行政間で共有できておらず、物資面でも足りていない状態でした。
また、この時に非常に気になる点が1つありました。この時点で、一部地域ではライフラインが復旧しておらず、しかしながら自宅は津波による流失、地震による倒壊、火事等から免れた方々に幾度となく移動中に出会った事です。彼らは、避難所にも入れず、物資も貰えず、だからと言って自宅での生活にも支障が出ている。この様な方達へのケアも今後の課題として残ります。
次に、災害時または災害後に被災者を襲ってくる災害関連死の中で歯科的に対応できる「誤嚥性肺炎」の予防について話させていただきます。
歯に残った食べカスが菌の住処となり形成された歯の汚れ=プラークを嚥下が上手く出来ない高齢の、それも非常に悪化した生活環境に置かれた方々が誤嚥する事で肺炎を起こすのです。口の中には、総数約1千億個もの菌がおり、容易に食べカスを菌の塊にしてしまうのです。この様な恐ろしい病気を口腔ケア、歯ブラシ1つで予防できるのです。実際、高齢者施設で口腔ケアを実施するとしてない方達に比べ発熱する方が減少する結果が出ています。被災地でも歯ブラシメーカーによるチラシにて、水が少ない被災地でも行なえる歯の磨き方について啓蒙活動を行っていました。
最後に非常時に役立つ事として、食用の重曹ティースプーン1杯(約3g)を500mlのペットボトルの水で薄め歯磨きの前後に数分間、マウスウォッシュの様に用いる事で汚れも落とし易くなり、作り置きも出来、虫歯や歯周病にも効果的だと言う情報を仕入れたので、お伝えしておきます。